研究内容

災害時には,上下水道など都市環境システムの被災,水環境における水質リスク,膨大な災害廃棄物の発生や有害物質の拡散など,人命・健康・環境に影響を与えるさまざまな課題が混在して発生し,平常時とは異なる対応,すなわち,緊急時の環境マネジメントが求められます。

平山研究室では,生(いのち)を衛(まも)る工学を基礎として,災害と環境の観点から,災害時の人命・健康・環境に対する影響を低減するために必要な社会環境システムをデザイン・管理するための技術・システム,技法の体系の開発・探究に取り組みます。

【研究の特徴】

「数値解析」と「社会実装」との両面から実践的な研究を進めています。すなわち,管網解析ソフトEPANET,数値解析ソフトMathematica,地理情報システムArcGIS等を用いて,数値シミュレーションモデル,数値解析モデル,統計モデルを構築します。また,数値解析により得られた研究成果をいかに社会実装するのか,その手法についても,水道事業体,自治体,米国ロサンゼルス市水道電気局等との国際的な産官学の共同研究としても進めています。

【研究内容の紹介】

(1) 水道管の離散的地震被害推定手法

本研究では,水道管網を構成する個々の製品である水道管に着目し,確率論的手法を用いて,水道管の離散的被害推定手法を構築しています。最大速度と被害率による水道管路の地震被害関数を構築し,地域メッシュ上において,これらの被害関数とポアソン分布によるモンテカルロ法での水道管路の離散的被害件数を推定手法を検討します。

(2) 災害エスノグラフィによる人材育成プログラムの開発

本研究では,2011年東日本大震災での仙台市水道局における災害エスノグラフィ調査(2014年9月17日~2015日8月26日,26名)に基づいて,ワークショップ形式での人材育成コンテンツを開発しています。

(3) 水道管路システムの災害レジリエントに対する評価手法の確立

水道管路システムの災害レジリエントに対する評価手法の確立とともに,水道事業経営と管路更新,管路耐震化の推進の影響因子を抽出し,人口減少社会における水道管路システムの災害レジリエント,事業経営,管路更新・耐震化との関連性について明らかにします。

(4) 災害情報システムを活かした災害時の水道水質リスク管理手法

本研究は,災害時の水道水質に対する適切なリスク管理の実現に向けた,①災害時水道水質リスクの「見える化」技術の開発,②災害時の水道水における化学物質リスク,微生物リスクの評価技術開発により,統合的な災害情報システムを活かした災害時の水道水質リスク管理手法を提言します。

(5) 災害廃棄物量把握システムの構築

メッシュ法による災害廃棄物量の推定手法を用いて,広く一般に入手可能なセンサスデータと災害直後に入手できる災害情報を用いて,災害初動時での災害廃棄物量を把握することが可能となるシステムを構築します。

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(6) 災害廃棄物処理統合システムの構築

仮置場確保と災害廃棄物の収集運搬を統合的に検討するツールとして,仮置場の確保面積,収集運搬効率を考慮した災害廃棄物処理フローモデルを構築します。そのうえで,仮置場の確保面積、収集運搬効率および処理期間における関係性を評価します。

(7) 巨大地図を用いた災害廃棄物ワークショップ手法の開発

行政の災害廃棄物対策担当者を対象とした,巨大地図を用いた机上演習システムを開発する。ここでは,可搬型プロジェクターによるプロジェクションマッピング技術を用いて,ハザード情報,災害廃棄物処理に関する情報を床面の地図や航空写真に投写し,仮置場や運搬ルートの選定などの具体的な災害廃棄物処理業務について,ワークショップ形式,机上演習方式で議論することで,処理計画の実効性を確保するための人材育成プログラムを提案します。

(8) 住宅耐震化施策と災害廃棄物量低減効果に関する研究

南海トラフ巨大地震では,3億5千万トンの災害廃棄物を処理するには,我が国の災害対応リソースを鑑みると約20年もの年月を要します。本研究は,住宅の耐震化による災害廃棄物量の低減効果を明らかにし,南海トラフ巨大地震等の国難を克服する方策を提示します。

 【その他の研究内容】

水道システムの水害リスクマップ,事業継続計画策定手法,災害廃棄物タイムライン等